小谷野敦「日本人のための世界史入門」レビュー

2017年6月12日

先日、大学を卒業していく先輩からいらない本を頂いたんですが、その中に入っていた1冊。

新潮新書、小谷野敦著「日本人のための世界史入門」です。

僕にとって歴史に関する本と言えばいわゆる歴史小説とか伝記だったので、こういう著者の主観が入りまくった歴史ものを読むのは新鮮な体験でした。

 

 

本当に入門なのか・・・?(笑)

この本は古代ギリシアから現代までの歴史をなぞっていく中で、著者の興味が向いた事柄に関して知見を述べていく形式になっています。

網羅性とか、歴史の流れとか、いわゆる勉強としての世界史入門を求めている人向けの本ではないですね。

むしろ高校で習うぐらいの世界史の知識は(ぼんやりとでも)ないと読むのが苦痛かも。

読む途中で、高校時代に世界史を習っていなかったら挫折してたかもなぁと何回か思いました。

最低限の基礎知識を持った人がさらに理解を深めていくための取っかかりとしては良い選択肢になりそうです。

 

エビデンスは豊富

作中に登場するエビデンスの量は素晴らしいの一言。

映画、文学、伝記など様々な資料が紹介され、著者の知識が相当豊富なことが伝わってきます。

例えばこんな感じ。

ウパニシャッド、「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」といった叙事詩は、紀元前四〇〇年頃の成立である。これらは名のみ高く、あまり読まれていないが、「ラーマーヤナ」は、シータ姫を悪人ラーヴァナが自分の島ランカ(セイロン)へ拉致する話で、神通力を持つ猿のハヌマーンがこれを救い出すといったところか。

~中略~

日本の人形劇「プリンプリン物語」(一九七九-八二)は「ラーマーヤナ」の世界に基づいており、そのためプリンプリンははじめシータと間違えられ、悪党はランカーと呼ばれ、守護神として猿がついている。ハヌマーンは東南アジアでも伝説の英雄で、かつてタイでは、ウルトラ兄弟がハヌマーンとともに戦う奇妙な映画が作られた。当然、「西遊記」の孫悟空はハヌマーンの影響で生まれたのではないかと考えられ、中野美代子は「孫悟空の誕生」でこれを論じたが、今のところ比較文学的には証明されていない。余談ながら、「西遊記」は日本でも人気があり、妖怪三人組(?)の一人沙悟浄は河童だと思われているが、シナに河童はいない。水の妖怪だが、ヨウスコウカワイルカではないかともされている。

なんかここだけ抜き出すと雑学本みたいになっていますが(笑)

こんな感じでいっぱい本や映画が紹介されています。

 

 

著者の主観が妥当なのかどうかは分からない(笑)

この本いろいろと言いたい放題なんですよ。

「「暗黒の中世」はキリスト教がもたらした」とか。いやホントかよみたいな。

もちろん著者は様々な知識のバックボーンを持って言ってるんでしょうけど、入門って名の付いたこの本を読むような人には多分そんなものはないので、まぁ話半分に聞いておくぐらいのスタンスがいいんじゃないかと。

著者は最近の歴史離れを危惧しているらしいので、はっきり言うことによって「これ本当かな?」って思った読者が調べることを期待してる面もあるんじゃないかな?とか思ったり。

 

 

一通り世界史を学んで、さらに教養を深めたい人向け

ずばりこの本の理想的な使い方は、教科書に載っている程度の世界史は抑えた上で、さらに教養として世界史を深めていくためのとっかかりとしての用法ですね。

紹介されている資料の数は相当なものなので、面白そうだと思うものがきっとあるはず。

文字通り一から世界史を勉強しようと思っている人には間違ってもオススメできないです。

 

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