【書評】機械脳の時代ーデータサイエンスは戦略・組織・仕事をどう変えるのか?

今日はこちら。

 

本書は非常に良い。

何が良いのかというと、

①実ビジネスでの事例紹介が豊富

②事例紹介に留まらず、データ活用プロジェクトの基本を押さえている

この2点。

 

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実ビジネスでの事例紹介が豊富

 

本書では企業におけるデータ活用の事例が11個紹介されている。

決済インフラの不正検知などイメージしやすいものから、社員のコミュニケーションを可視化するといった一見イメージしづらいものまで話題の幅は広い。

もちろん実ビジネスの話なので手法などの詳細については公開されていない情報が多く、技術的な詳細については立ち入られていないが、機械学習や統計分析がどのように応用されているかという雰囲気を掴むことができる。

 

手法や実装に焦点を当てた教科書の数に比べて、こういった実応用例を広範に紹介している資料の数は少ない。

実応用がイメージできるかどうかは実務的にもモチベーション的にも重要なのでこの1点だけでもオススメできる本だ。

 

 

事例紹介に留まらず、データ活用プロジェクトの基本を押さえている

本書の素晴らしい点はここ。

 

「こういうデータがあるから何か分析してアウトプットを出せないだろうか?」

この発想は非常にありがちだ。

ビジネスサイドの人間も、エンジニアリングの人間も、今あるデータをとりあえず活用しようとする。

だが大抵、この方法ではうまくいかない。

 

「この課題を解決したい」→「どういったデータがあれば解決できるだろうか」と課題ベースで考え、データを収集するのが本来あるべきデータ活用プロジェクトの姿である。

 

本書はその点が一貫されている点が素晴らしい。

データ活用プロジェクトでは「どのように分析するか」に焦点が当てられがちだが、「課題を考え、どういったデータを用意するか」の方が(多くの場合)結果に影響するのだ。

 

そのためには、現場をよく知るビジネスサイドの人間とエンジニアリングの人間の間のチームワーク、共通言語による理解が必須である。

本書ではそれを踏まえ、データ活用プロジェクトにおけるABCDEフレームワークを考案している。

 

ABCDEはそれぞれAim(目的)、Brain(手法)、Coding(実装)、Data(データ)、Execution(実行)の頭文字であり、データ活用プロジェクトに欠かせない各フェーズである。

基本的なデータ活用プロジェクトの進め方と各フェーズにおける注意点が簡潔にまとめられており、汎用性の高いフレームワークに仕上がっている。

 

ビジネスサイドの人間も、エンジニアリングの人間も必ず学ぶものがあるだろう。

 

 

まとめ

本書は事例を幅広く紹介するだけに留まらず、データ分析プロジェクトのチームプレーな一面に触れ、汎用性の高いフレームワークを考案している。

 

一方で、途中でも触れたように実ビジネスの話であるため、手法や技術の詳細には踏み入っていない。

機械学習やAIというよりはより包括的な(例えばデータの可視化のような話も含めた)データ活用プロジェクトの話である、ということにも留意されたい。

もちろん単にデータの可視化と言っても、可視化するデータの種類と仕方によっては十分なバリューを出せるし、そういった具体例も本書に掲載されている。

 

まとめると、本書は実ビジネスへのデータ分析、活用におけるいろはを取り扱った良書であると言えるだろう。